少しハニカム構造体

ふみのつれづれ

ストレートネック

医者に行って時々やってくる頭痛を訴えると、すぐさま首のレントゲンを撮ろうということになる。撮った結果を医者の机の上のモニター画面で見ると加齢からくるストレートネックが原因らしいということになる。そんなコトバ初めて聞いた。ネックが曲がっていないのは良いことなんじゃないのか、と、ギターを弾く私はすぐ思っちゃうのだが、この医者が言うにはニンゲンの首はそうではなくギターで言うところのいわゆる順反りでなくてはいけないらしい。難しいもんだ。

去年のお盆の夜、実家のお向かいのお兄さんと私の実家でギターを弾いて遊ぶ。街灯もまばらで車もほとんど通らない外の暗がりでしばらく立ち話をして、彼も今でもギターを弾いていることを知りなんだか嬉しくなって、勇気を出して誘ってみたのだ。ちょうど来客用に買ったはいいが余りそうな缶ビールが冷蔵庫にあったし、何より実家で弾くために私もギターを置いてあったから。

お向かいのお兄さんというのは、一緒に幼稚園に通った幼なじみの子の、そのお兄さんのこと。私がお向かいさんつまり幼なじみのところへ遊びに行っていたのはたしか小6ぐらいまでで、幼なじみは私の1つ上、お兄さんは私より6歳か7歳上じゃないかと思う。その年頃の6歳7歳違いというのはかたや子供かたや大人の世界の住人、関心にほとんど接点などないはずなのだが、私が幼なじみの家に遊びに行っていた最後の1年くらいの間、何故か3人にはギターという共通の趣味、関心事があった。

ただもちろん子供と大人なので、(もっとずっと小さかった頃はともかく)当時私がそのお兄さんにギターで遊んでもらった、というか教えてもらった記憶は一度か二度しかなくて、だから余計に印象が強いのかもしれない。当時私はあの初心者の前に最初に立ちはだかる大きな壁、Fというかセーハというヤツがまだできなくて、AmとかCとかしか押さえられなかったし、幼なじみの子も私よりちょっとだけ上手という程度で、だからそんな私にとってこのお兄さんはものすごく上手に見えた。というか、見えたはずだ。よくは覚えていないけど。

うちに来ないかと話して私が家に戻って少しして、お兄さんは裸のギターをそのまま抱え、それに鉢巻と腹巻きを付けていたらバカボンのパパというようないでたちでやってきて(なにしろお向かいだから)、私が差し出した缶ビールを飲みながら他愛のない昔話をする。その後の私の音楽遍歴を話すと、へえ俺がギターを教えたことなんてあったっけ、じゃあ俺が○○ちゃん(当時の私のニックネーム)の師匠ってわけだなあ、とちょっと悦に入ったような表情をしながら、このギター伴奏はかなり難しいのだという前置きとともに吉田拓郎のナントカという曲を弾き始める。

夜も遅いというのに私の家で声を上げて弾き語りを始めたお兄さんを眺めながら、いくら向かいだからってふつうこんな服装で来るかなあ、ああ早く帰ってくれないかなあ、などと(呼んでおきながら)勝手なことを考えていた。お兄さんが帰ったあと部屋になんだか男臭い臭いがしばらく残っていて、とっても嫌だった。