少しハニカム構造体

ふみのつれづれ

スリーパーホールド

おばあちゃんの二十三回忌の法事だのおかあさんの施設入所のことだの、はたまた法務局の土地調査の立ち会いだのもろもろの用事をこなすため、三泊四日で郷里に戻る。

4日間の滞在中あいにく法事の当日だけすこし天気が悪くて、唯一の内孫のくせにおばあちゃんのお葬式に出なかった私としては、不徳のいたすところといった感じか。それでも食事会を初めて景勝地に建つパークホテルにしたのは、やっぱり大正解だったかもしれない。最後に集合写真を撮ったとき、叔母さんがここぞとばかりに「アンタが跡取りなんだから真ん中に来なさい」とか何とか言い始めて、私は叔母さんの後頭部を睨み返す。

何がどうということはないのに、今回の郷里はなんだかいつもに増して居心地が悪い。なんでだろう。父が亡くなる前は、ああ私には帰る場所なんてないのだ、いっそのこと知り合いを頼って四国にでも行きたいなあなんて思ってもいたのに、血というヤツはやっぱり人をがんじがらめにするもんなんたなあ、と思う。しかも、がんじがらめにされることが、それはそれでなんだか心地よい。

その日の夜だったか、私のほか誰もいない実家で寝ていたら、腕がすごく太い白人プロレスラーに首を締められる夢を見る。最初は苦しいと思っていたが、思いの外このレスラーが力を入れていないことに気づく。それでも外そうともがいていたら目が覚めて、気付いたら自分の腕をおかしな具合いに自分の首に巻き付けて寝ていて、柱時計を見たら夜中の1時半だった。

誰もいないと書いたが、それでも仏間がありしかも法事なんかをしたりしていると、亡くなった人と共に居るというかあの世と接しているんだなあ、という空気みたいなものを感じる。

翌日2カ所の施設にうちのおかあさんの入居希望を出してきたことを母方の叔父に話したら、叔父は、うちのおかあさんはそう長くはない気がするから覚悟だけはしておけ、と言う。私はこの叔父が大嫌いだ。

郷里とは難しいものだ。