少しハニカム構造体

ふみのつれづれ

熱風

長い間全く目を通していなかった本を手にとってぱらぱらめくってみる。書名と作者はナイショ。企業秘密。フシギなことにその本を初めて手にした時の感覚の残像みたいなものがなんだかリアルに蘇ってくる。あの時味わった、活字がページがキラキラと迫ってく…

止まない風となつかしさ

「なつかしい」っていうのが、よくわからない。なつかしいという感興というか。誰かと話していて何か昔の話題になって「うわあ、なつかしい~」ってつい口にしたりするけど、その時の私のキモチはほんらいの「なつかしい」っていうコトバの意味とか用法とは…

無菌室の日々

ワールドカップ、日本代表が決勝トーナメント出場を賭けてポーランドと戦う時間は日本時間で23時、翌日仕事だから寝なきゃと思って横になってもみるけどでもサッカーも気になって、でもうちにはテレビがないので時々スマホで得点を確認して、結局夜中の1時…

スリーパーホールド

おばあちゃんの二十三回忌の法事だのおかあさんの施設入所のことだの、はたまた法務局の土地調査の立ち会いだのもろもろの用事をこなすため、三泊四日で郷里に戻る。4日間の滞在中あいにく法事の当日だけすこし天気が悪くて、唯一の内孫のくせにおばあちゃ…

新聞

ある朝上司が私に、良かったらコレ読んでみて、と新聞一枚を渡す。紙面一枚使った精神障害についての特集記事。障害者さん自身の、あるいは障害者さんと関わる人の手記がいくつか載っていて、その中に、精神障害者を奥さんに持つ旦那さんが書いたものがある…

誰かに似てる

日曜日、実質的には今年唯一と言っていいかもしれない神輿担ぎ。そこの神輿の何やら役をやっている神輿仲間のお宅は一軒家、神輿の接待所にもなっていて、知人の奥さんは朝からばたばたと準備に余念がない。お招きいただいたやはり神輿仲間と連名でわずかば…

9カ月

この月末、私とほぼ同時期に入社した障害者さんが9カ月というヤマを越える(まあ正確に言うと事情はちょっと違っていて私の方が1カ月早いのだが、なぜ一緒と数えているのかも含めそれはさておき)。彼にとって入社9ケ月なら私にとってもそういうわけで約…

冬支度

昨日の仕事おわり、明日から遅い夏休み、旅行のために長期休暇をとる上司と二人きりになって、私のいない間しっかりやってくれよ、と言われる。あらためて言われるまでもなく私にとってしっかりやるということはいつもどおりやるというだけのことなだが、そ…

スケジュール帳と、ジャンヌ・ダルクあるいはドン・キホーテ

来年のスケジュール帳を買う。色柄ともに今年とまるきり同じ、つまりメーカーと品番が同じもの。地味で、それでいてちょっとオンナっぽいかもしれないカバーの色。今まで毎年毎年いろんなデザイン、ときにはキャラクターものだったりときにはカバーが別売で…

傷だらけのローラの人生はいろいろ

お盆に帰郷したとき、従妹と従妹と私の共通の友人、私にとっては初対面の子、という女性ばかり4人で飲んでいて2軒めにカラオケスナックに行く。従妹ともカラオケが初めてなら他の2人とも初めて。別に好きな歌を歌えばいいのだが妙なウケ狙いの気持ちにか…

夏の終わりの蚊は凶暴

どの季節がいちばん好きかと言われれば、私は断然、梅雨時だ。じめじめしていて、植物たちがむわあっと清潔な体温を発散させる。その匂いに包まれると、私はホントは人間ではなく植物に生まれるべきだったんじゃないかと思う。次生まれてくる時は、たとえす…

ぬるいそば

私が東京に出てきていちばん最初に「ああ、都会だなあ」と実感した場所は、実は方南町だった。方南町というのは丸ノ内線の中野坂上駅から分かれて、たった3つばかりの駅がある丸ノ内支線のその終点、いわゆる盲腸線というのか、その突端、方南通りと環七の…

残像

本当ならばリアス式海岸の入江のおだやかな海を眺めることができたはずのその海沿いの国道は、津波のあと築かれた堤防のせいで景色が台無しになり、きっとそのせいもあって私の言葉数は多い。もし海が見えたら、助手席の私はたとえ今日が小雨まじりの天気だ…

盗んだバイクで走らない

こんなことを書くと私には繊細さのカケラもなく(曲がりなりにも短歌を齧っていたのに)詩人の素質が全くないということを暴露することになりそうなので少し気が引けるのだが、小学校中学校とくに小学生の頃は学校が大好きだった。学校は勉強するところなの…

ストレートネック3

私が通っていた今はもうない幼稚園。毎日私の実家のお向かいに住む一歳上の子と一緒に通っていた。小学校の校庭を斜めに突っ切り、そのすぐ先。大人になってその幼稚園を眺めていて園庭の狭さに愕然とした。よくもあんな狭い庭で運動会なんてやれたもんだな…

ストレートネック2

前回の話の続き。というか後日談のような話。今年のお盆の夜はフシギとなつかしい人に立て続けに会う。ちょっと説明しておくと、私の郷里ではお盆の間、毎夜松明かし(まつあかし)といって松を短く裂いたものを燃やし火を焚く。13日には迎え火、14日15日も…

ストレートネック

医者に行って時々やってくる頭痛を訴えると、すぐさま首のレントゲンを撮ろうということになる。撮った結果を医者の机の上のモニター画面で見ると加齢からくるストレートネックが原因らしいということになる。そんなコトバ初めて聞いた。ネックが曲がってい…

家を建てたい

さいきん、家を建てたい、と猛烈に思うようになった。実家の土地に自分の家を建てる。今の実家は、住むのにはちょっと不便なのだ。終の棲家が欲しいとはさらさら思わないが、まあ、基地がもうひとつあってもいいかなあ、あった方がいいなあ、と。私の財産は…

クリオネ、もしくは天秤を持たない人

今回も今回でなかなか手ごわい相手だった。前評判は最強、始まってみるとクネクネとしてつかみどころがない。はてあの前評判はなんだったのか、コイツはバテているのかと思わせておいて終盤になって非常に強烈なパンチを繰り出してきて、私は危うくリングに…

たましいの尻尾が来なかった家

前回の続きというか、そもそも最初書こうとしていた方の話。そういうわけで、たましいの尻尾が来なかった家、というか、尻尾がちぎれたままのたましいで高校時代を過ごした家について、これから先どうするつもりなの、と親戚から聞かれるような年齢、状況に…

たましいの尻尾の入った箱

私の今の実家は私が高校受験の頃に建て替えたものだが、それまで住んでいた土地に建て替えるので工事中の仮住まいが必要だった。仮住まいに借りた家の、1階はもとは何かの店だったんだろうと思うようながらんとした広いスペースで、そこが我が家の家具だの…

ふみ、久しぶりで地元でマイクを握る

すごく久しぶりで夜外活動をする。行きつけのカラオケスナックに行ってお酒を飲むこと。ママやスタッフもそうだが、この人たちは生活費のいったい何割をこのお店に支払ってるのかと思うような常連客の元気そうな顔を見れるのは、それだけでなんだかちょっと…

嫁の心得

いまマイブームの言葉は「嫁の心得」。頭の中を嫁の心得、嫁の心得、と、嫁の心得が渦巻く。というか右往左往する。職場の30代の同僚の家にはこの嫁の心得というのがあって、未婚女性であるその同僚のそのお母さんまではこの嫁の心得が受け継がれているのだ…

信玄餅と利き自転車

とにかく私は運動オンチで、まあそれと言うのも私が3歳とかそのくらいの頃に生死の境をさ迷うような大ケガをして、市内の病院では処置のしようがなく途方に暮れた両親がソロバンで八卦の占いをする人のところに行って「この子は将来人の上に立つ人になるか…

盆カレー、あるいはちょっと盆ロス

お盆は亡くなったご先祖さんが年に一度帰って来る時期なのだそうだが、年に6回郷里に帰ってくる私と年に1回しか帰ってこないホトケサマ、どちらが優遇されどちらが接待を受けて然るべき立場かというと、やっぱりホトケサマ、こちらはいまだ現世で修行中の…

矜持

トランスジェンダーとしての矜持ということで言えば私は甚だ意識低い系なので、普段スカートも殆ど穿かなければお化粧もほとんどしないし、性別変更の審判も東京家裁でさっさとやってしまったし(後進の一助になるという理由で、まだ性別変更の審判が一度も…

カテーテル

去年の12月、杉並区内の某病院で頭の手術を受ける。はじめ頭痛がして市販の頭痛薬も効果がないみたいなので、それでも1ヶ月ほどだましだまし過ごして(肩というか首のうしろがすごく凝るような感じないもあって、うちにあったマッサージ器をあててみたり、…

血圧の薬

三波春夫とジャイアント馬場と力士の豊山が好きだった母方の祖母は今にして思うと妙にかわいい仕草をする人で、首をすくめて、舌をちょっと出しながら「てへっ」と、とくに病院からもらってきたパンパンに膨れた薬の袋から血圧の薬、それもいわゆる頓服とい…

妙にすがすがしい

今の職場についてスパッと話すのはちょっと難しい。施設ではないし純然たる一般企業というわけでもないし、まあ、障害者雇用に力を入れている企業の中の、その就労支援担当、というところ。資格を持っているわけでもない私がこの仕事を選んだのには、正直言…

移転

エキサイトブログから移転してきました。よろしくお願いします。前のブログ「ハニカム構造体」http://rhoupnke.exblog.jp/